山室真澄教授の魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う 読了!

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今回は東京大学の山室真澄教授の書かれた釣り人社からでた著書、魚はなぜ減った?見えない真犯人を追うを読了したので紹介します。Twitterのつぶやきで山室真澄教授のYouTube動画を拝見して勉強になった事が切っ掛けで本も出ている事を知り購入しました。

近年、魚が減った理由として外来魚が在来種を食べてしまうという考え方が一般的に語られていますが、現在は様々な研究がなされていて、農薬や殺虫剤が虫を殺す事で生態系を崩し餌が取れなくなることで、魚や鳥などの生物が減っていると考えられています。

この著書では島根県の宍道湖の魚類の減少をネオニコチノイド系の殺虫剤を農家が使用することが原因であると山室教授が研究した内容を釣り人にも分かりやすくを解説した本になっています。この本の素晴らしい所は農薬=悪というスタンスだけで全てを解説していない点です。


「魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う」とはどの様な内容の本!

引用 Amazon

山室教授のプロフィールとしては1960年名古屋生まれ。高校2年生で米国の高校に編入。帰国後、東京大学・文科三類に入学。理学部地理学教室に進学し、1984年東京大学理学部地理学教室卒業。1991年東京大学理学系研究科地理学専門課程博士課程修了(理学博士)。通商産業省工業技術院地質調査所。2001年産業技術総合研究所海洋資源環境研究部門主任研究員。

大学での卒業研究から学位論文まで宍道湖の生きものをテーマに研究された後も宍道湖で研究を続けられ、研究結果をもとに論文「Neonicotinoids disrupt aquatic food webs and decrease fishery yields」を発表。2019年に『science』誌に掲載されます。

「魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う」はこの論文の内容を正しく理解できるように釣り人社が月刊つり人で2020年7月~2021年2月まで山室教授に執筆を依頼してたモノを一冊にまとめた書籍です。

読んでいると専門的な用語なども出て難易度は高いですが、専門家でもないボクのような釣り人が読んでも理解できる内容になっていますし、これまで正しいと思っていた環境に関する情報が誤りであったことも、この本を読むことで学ぶ事ができました。


生き物と同士の繋がりの複雑さと重要性! 食物連鎖を学びなおせた

引用 Amazon

この著書では先ずは抑えておくべき内容を説明されているので、飛ばし読みをすると理解が出来なくなる部分があるので、最初から読み進める事をおすすめします。

ボクも言葉では聞いたことのある食物連鎖の内容が丁寧に書かれており生き物の循環がどの様に行われいるのか、そして、とても循環はとてもデリケートな関係で成り立っている事が学べます。

著書の中に餌が減ればその餌に依存する上位の生物も減る生態ピラミッドが示す概念が生態系を理解するうえで有用であるとありました。

この食物連鎖を崩してしまうのが、殺虫剤や農薬にあたりますが、著書では何故、農家が農薬を使うのかも説明されていますし、農薬の使用を抑えた取り組みをされている兵庫県の豊岡市でのコウノトリを育む農法も紹介されています。


水辺の環境について中学校の教科書にも誤った内容が記載されている!

著書を読んで衝撃的だったのが、水辺の植物が多い事で弊害が生まれる側面がある事実を学べた点です。ボク自身も水辺のアシやアサザがある事で水質の浄化が促されていると思っていましたが、そうではないようです。

著書では水辺の植物が窒素やリンを吸収する事で水質浄化がされるという認識だけが独り歩きしている結果、水辺にアシやアザサを植栽することが奨められているが、この行動はアザサやヒシは水面を覆いつくして酸素が乏しく酸欠になり泥底になる要因になると指摘されています。

また、枯れた草木は有機物として水底に沈みバクテリアによる分解が進む為にヘドロ化すると書かれています。水質浄化には有機物を減らす事であるのに真逆な事が推奨され、中学校の教科書にも誤った内容が記載されていると指摘されていました。

ボクが幼少の頃に見ていた葦焼きなども意味が合ってされていた事なんだと学ばせて貰いましたし水中の水草を畑の肥料として農家の人が船を出して水草を狩る事が水質浄化のサイクルにもなっていたという歴史的なお話もとても興味深かったです。


ネオニコチノイド系の殺虫剤とはどのようなものか?

引用 Amazon

殺虫剤や農薬には様々な種類があり、1960年代から有機塩素系のDDTやBHCが使われ70年代から80年代には有機リン系、カバーメート系、ビレスロイド系の殺虫剤が使われます。1992年に著書で取り上げているネオニコチノイド系の殺虫剤が使用されます。

殺虫剤が人体に悪影響を及ぼした歴史があったのも事実で有名な事例としては1962年に有機塩素系の殺虫剤DTTが大量散布された事で魚類が激減したりした事例を載せたレイチェル・カーソンの「沈黙の春」があります。

ネオニコチノイド系殺虫剤は昆虫の神経伝達を阻害し適用できる害虫の種類が広いという特徴があります。また、脊椎動物への急性毒性が低く、環境の中で分解されにくい特性があり、水溶性で植物への浸透移行性が高いことなどから、農作物の生産性向上等に役立ってきました。

著書でも触れられていますが、昆虫などの無脊椎動物だけでなく脊椎動物に対する免疫機能や生殖機能の低下などの慢性毒性が報告され生態系への影響が懸念されるようになってきました。ミツバチ減少の原因としても疑われており、ネオニコチノイド系を規制する国もあります。


知らなかった! 日本の農薬使用量は1ha当たり11.8㎏と多いそうです!

著書を読んで、もう一つショッキングだった内容は科学農薬の使用量に関するデータです。一般的に農薬を使いまくっているイメージのある国はアメリカで日本で作られた野菜は安全とよく自慢していますが、事実はそうではないようですね。

アジア中国 13.1㎏ 
韓国12.4㎏
日本11.8㎏
ヨーロッパ オランダ  7.9㎏
ベルギー6.7㎏
アメリカアメリカ2.5㎏
農薬の1ha当たりの使用量

農薬を多く使っている国はアジア、ヨーロッパ、中南米でアジアでは東アジアが使用料が多く1ha当たりの使用量は中国が13.1㎏、韓国12.4㎏、日本11.8㎏でヨーロッパで多く使われているのはオランダで7.9㎏、ベルギー6.7㎏です。

大量に農薬を散布しているイメージのアメリカの使用量はたったの2.5㎏で他の国と比べても使用量が低い事が学べました。なんか、ショックですよね!

しかし、これには理由があって東アジアの使用量が多いのは夏にモンスーンの影響で高温多湿による病虫害の被害が多くなることとお米の生産する国に見られるようです。


おわりに

今回は東京大学の山室真澄教授の書かれた釣り人社の「魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う」を読了したので紹介しました。

著書の中で「日頃、水際で魚に親しんでいる釣り人の読者に魚が減った原因を見極めるコツを伝え、子や孫の代まで豊な水辺が日本に残る様に日本の農業を変えていく原動力になって頂きたい」とありました。重要な内容がたくさん載っている一冊なのでぜひ手に取って学んでいただけたらと思います。

ブログでは書き切れない素晴らしい内容の本でした。このようなバス釣りに関連する素晴らしい一冊がありましたらご紹介したいと思います。このブログ記事があなたのバスフィッシングライフのサポートになれば幸いです。


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