ブラックバスを愛してやまないアングラーのみなさん、こんにちは!今回の釣りたいバス釣り日記は、最新のゲノム研究によって「ブラックバスの種類」が再定義された事を紹介します。
バスフィッシングを愛するすべてのアングラーにとって、今まさに歴史の教科書が書き換えられる瞬間に立ち会っていると言っても過言ではありません。
日本におけるブラックバスの歴史は、1925年、実業家・赤星鉄馬氏がカリフォルニア州から約90匹のノーザンラージマウスバスを持ち帰り、箱根・芦ノ湖に放流したことから始まりました。2025年には、記念すべき「放流100周年」を迎えたタイミングで、皮肉にも私たちが長年信じてきた「常識」が根底から覆されました。
これまで、専門家や釣り人の間では「ブラックバスは6種5亜種の計11種類である」という分類が定説とされてきました。しかし、イェール大学を中心とした研究チームによる最新のゲノム解析結果は、その数値を大きく上回る**「19種類」**への再定義を迫るものだったのです。
これは単なる学術的な名称の細分化ではありません。私たちが「ラージマウス」と呼んで疑わなかった魚の正体が、実は別の学名を持つべき存在であったり、あるいは数百万年もの間、人知れず独自の進化を遂げてきた「未発見の新種」であったりすることが判明したのです。
「あなたが今日、誇らしげに掲げたその一匹は、本当に私たちが知っている『ラージマウスバス』なのでしょうか?」
本記事では、最新の科学的知見に基づき、ブラックバスという魚の真の姿を徹底的に解説します。釣りのターゲットとしての魅力だけでなく、地球規模の生物多様性の観点から、この衝撃の再定義が意味する未来を紐解いていきます。
では!! ブラックバスの種類が11種類から19種類へ!ゲノム研究による再定義!の始まりです(^O^)/
——————————————————————————–
ゲノム解析が暴いた真実:ddRAD解析による革新
なぜ今、これほど大規模な分類の再編が必要となったのでしょうか。その背景には、従来の「見た目」による分類の限界と、遺伝子解析技術の飛躍的な進歩があります。
従来の分類の限界と「隠れた多様性」
これまで、ブラックバスの分類は「形態学的特徴」に依存していました。側線上の鱗の数、ヒレの条数、あるいは口の大きさや模様といった外見的な差異です。しかし、ブラックバスは極めて環境適応能力が高く、生息する水域の濁りや水温、餌の種類によって体色や体型が劇的に変化します。
このように、外見だけでは区別がつかないものの、遺伝的には完全に分断されている状態を、科学用語で**「隠れた多様性(Cryptic Diversity)」**と呼びます。従来の分類法では、この数百万年にわたる進化の軌跡を見逃していたのです。
最新のddRAD解析のインパクト
イェール大学のデーミン・キム(Daemin Kim)博士らの研究チームは、ddRAD(double digest Restriction-site Associated DNA)解析という革新的な手法を導入しました。これは、DNAの全配列を闇雲に調べるのではなく、特定の制限酵素を用いて切断した数万から数十万箇所の遺伝子断片を効率的に、かつ精密に比較する手法です。
- 研究規模: 北米全域の河川から収集された394個体の標本を対象に実施。
- データ量: 数十万もの一塩基多型(SNP)を解析し、個体間の親縁関係や進化の道のりを詳細に可視化。
この「生命の精密な設計図」を比較することで、見た目では判断不能だった微細な差異が、実は明確な「種の境界」であることが証明されたのです。
「情報の提供された管理と保全の努力は、持続可能なレクリエーションフィッシングと生物多様性の保全にとって不可欠である。……種の正確な区別がなければ、希少な種や未発見の種を見過ごし、絶滅のリスクを高めてしまう可能性がある。」 (Scientific Reports, 2022年、Kim et al. 論文より引用)
——————————————————————————–
【衝撃】学名の入れ替わり:フロリダバスとラージマウスバスの逆転劇
今回の研究において、世界中のアングラーと科学者を最も驚かせたのが、ブラックバスの代名詞である「ラージマウスバス」と「フロリダバス」の学名が、過去75年間にわたって**「逆」**に適用されていたという事実です。
チャールストンの模式標本が語る「科学的誤解」
この混乱の原因は、1802年にまで遡ります。フランスの剥製家ラセペード(Lacépède)は、サウスカロライナ州チャールストン近郊で採集された標本に基づき、Micropterus salmoides という学名を命名しました。これが長い間、広域に分布する「ノーザンラージマウスバス」の学名として定着しました。
一方、フロリダ半島特有の巨大化する個体群には、1822年に命名された Cichla floridana(後の Micropterus floridanus)が適用されてきました。
しかし、今回のゲノム解析によって、驚くべき「科学的な落とし穴」が露呈しました。学名の基準となったチャールストン(M. salmoides の模式標本産地)に生息しているバスを調べたところ、彼らは遺伝的にフロリダバスそのものであったことが判明したのです。
再定義による「学名の引越し」
分類学のルール(国際動物命名規約)では、種を定義する際の基準となる標本(模式標本)が持つ名前が最優先されます。その結果、以下のような学名の入れ替えが発生しました。
- フロリダバス
- 新学名: Micropterus salmoides
- (これまでのラージマウスバスの学名が、実はフロリダバスのものだった)
- ラージマウスバス(ノーザン)
- 新学名: Micropterus nigricans
- (1828年に五大湖周辺の個体に付けられた古い名称を復活・昇格)
75年以上連れ添ってきた名前が、ある日突然、隣の家の魚の名前だったと告げられる――この歴史的な「名入れ違え」は、水産学界における世紀の発見と言えるでしょう。
——————————————————————————–
19種類の全容:4つの主要コンプレックスと独立種
再定義された19種類のブラックバスは、大きく「4つの主要なコンプレックス(種群)」と、独自の進化を遂げた「2つの独立した系統」に分けられます。

1. ラージマウス・コンプレックス (2種)
最も一般的なこのグループは、学名の入れ替えによって整理されました。
- フロリダバス (Micropterus salmoides)
- 分布: フロリダ半島から北はノースカロライナ州、西はアパラチーコーラ川まで。
- 特徴: 巨大化のポテンシャルを秘めた南国の王者。
- ラージマウスバス (Micropterus nigricans)
- 分布: ミシシッピ川流域、五大湖を中心に北米に広く分布。
- 特徴: 環境適応能力の高さ。
| 識別項目 | ラージマウスバス (M. nigricans) | フロリダバス (M. salmoides) |
| 側線上の鱗数 | 59~68枚 | 69~73枚 |
| 側線から上の鱗数 | 7~9枚 | 8~9枚 |
| 側線から下の鱗数 | 15~16枚 | 17~18枚 |
| 頬の鱗数 | 10~11枚 | 11~13枚 |
2. スモールマウス・コンプレックス (4種)
冷水域を好むこのグループでは、2つの「新種候補」が特定され、1つの亜種が種へと昇格しました。
- ノーザンスモールマウスバス (Micropterus dolomieu)
- 五大湖北部からカナダに分布する、私たちが知るスモールマウス。
- ネオショー・バス (Micropterus velox)
- 従来の亜種から独立種へ昇格。オクラホマ州やミズーリ州のオザーク高原に生息。
- リトルリバー・バス (Micropterus cf. dolomieu Little)
- オクラホマ州南東部のリトルリバー水系に固有の新種候補。
- ワシタ・バス (Micropterus cf. dolomieu Ouachita)
- アーカンソー州のワシタ川上流に限定的に生息する新種候補。
これらの種は「冷水専門家」であり、農業排水による堆積物や水温上昇、生息地の断片化によって絶滅の危機に瀕しています。
3. スポッテッド・コンプレックス (4種)
口の中(舌)にある歯「基舌骨」を持つことで知られるグループです。
- ノーザンスポッテッドバス (Micropterus punctulatus)
- アラバマ・バス (Micropterus henshalli)
- 独立種として認められたことで、IGFAの世界記録カテゴリーが新設されました。側線上の鱗数が多く(68〜75枚)、流線型の体型が特徴。
- グアダルーペ・バス (Micropterus treculii)
- テキサス州の「州魚」。鮮やかなライムグリーンの体色が美しく、渓流域を好みます。
- チョクトー・バス (Micropterus cf. punctulatus)
- フロリダ州パンハンドル地方で発見された新種候補。
特にアラバマ・バスは、他種との「交雑リスク(イントログレッション)」が極めて高いことが研究で指摘されており、固有種の純血性を守ることが急務となっています。
4. レッドアイ・コンプレックス (7種)
今回の再定義で最も劇的な多様性が認められたグループです。各河川ごとに「数百万年単位の孤立」が生んだ独自の進化が見られます。
- レッドアイ・バス (Micropterus coosae): クーサ川。
- カハバ・バス (Micropterus cahabae): カハバ川。
- タラプーサ・バス (Micropterus tallapoosae): タラプーサ川。
- ウォリアー・バス (Micropterus warriorensis): ブラックウォリアー川。
- チャタフーチ・バス (Micropterus chattahoochae): チャタフーチ川。
- アルタマハ・バス (Micropterus cf. coosae Altamaha): アルタマハ川。
- バートラム・バス (Micropterus cf. coosae Bartram’s): サバンナ川。
彼らは「コバルトブルー」や「ライムグリーン」の美しい色彩を持ち、昆虫を主食とします。非常に脆いマイクロ・ハビタット(極小生息域)に依存しているため、一箇所の環境汚染が種の全滅に直結する危険性を孕んでいます。
5. 独立した系統 (2種)
- スワニー・バス (Micropterus notius)
- すべてのブラックバスの「姉妹系統」であり、最も原始的。フロリダとジョージアの石灰岩質の河川にのみ生息。真っ赤な目とコバルトブルーの体色は息を呑む美しさです。
- ショール・バス (Micropterus cataractae)
- 岩場や急流を好むスペシャリスト。尾ビレの付け根の巨大なスポットが特徴。
——————————————————————————–
5. IGFA(国際ゲームフィッシュ協会)の対応と世界記録の行方
この科学的革命に対し、釣り界の権威であるIGFAも2024年6月、迅速に公式ルールを刷新しました。これは「科学がスポーツフィッシングの歴史を書き換えた」象徴的な瞬間です。
アラバマ・バスの独立と35の新たな栄誉
IGFAはアラバマ・バスを独立した種として正式に認定しました。これにより、以下の変更が加えられました。
- 35件の新規記録チャンス: 男性・女性別のラインクラス、ティペットクラスなど、35の新しい世界記録カテゴリーが誕生しました。
- これまで「スポッテッドバス」として申請されていた多くの過去記録が、遡って「アラバマ・バス」へと修正されました。
世界記録申請には「遺伝子検査」が必要に
外見上、判別が極めて困難なラージマウスバス(M. nigricans)とフロリダバス(M. salmoides)の扱いについて、IGFAは以下のように決定しました。
- 通常カテゴリー: 「Micropterus nigricans/salmoides」という統合名称で継続。
- All-Tackle世界記録: ジョージ・ペリーや栗田健男氏の記録に迫るような、歴史的な世界記録級の申請については、今後**「遺伝子検査」による特定**が義務付けられました。
もはや、重さだけで世界一は名乗れません。「科学的に何者であるか」を証明して初めて、記録は歴史に刻まれる時代になったのです。
——————————————————————————–
日本における4種類の現在地
日本のフィールドには、現在4種類のバスが生息していると考えられます。
- ノーザンラージマウスバス (M. nigricans)
- フロリダバス (M. salmoides)
- ノーザンスモールマウスバス (M. dolomieu)
- ノーザンスポッテッドバス (M. punctulatus)
ここで重要なのは、私たちが長年用いてきた「側線上の鱗数(69枚以上ならフロリダ傾向)」という判別手法の有効性です。 結論から言えば、この手法は**「現場レベルでは依然として有効だが、注意が必要」**です。
最新の研究により、フロリダバス(M. salmoides)の本来の分布域はこれまで考えられていたよりもずっと北(ノースカロライナ州付近)まで及んでいることが判明しました。
つまり、私たちが「フロリダ」だと思っていた個体の中に、実は北部にまで生息域を広げていた「純正フロリダ種」が混ざっている可能性があるのです。特に琵琶湖や池原ダムのように、両種が混在し、さらに交雑が進んでいる水域では、もはや外見での100%の特定は不可能に近いと言えるでしょう。
——————————————————————————–
まとめ:19種類への拡大が意味する未来
ブラックバスが19種類へと再定義されたことは、単なる名前の整理ではありません。それは、人間による安易な「放流」や「移殖」が、何百万年もの時間をかけて育まれてきた生命の傑作を、いかに容易に破壊してしまうかを警告しています。
例えば、広域種のノーザンスモールマウスを、特定の河川にしかいないネオショー・バスの生息域に放流すれば、交雑によって数世代のうちにネオショーという「種」の歴史は消滅してしまいます。私たちが良かれと思って行った行動が、実は取り返しのつかない「生物学的虐殺」を招いている可能性があるのです。
「種類を知ることは、守るべき命の境界を知ることである」
この19という数字は、水辺に生きる命の豊かさを示すと同時に、私たちアングラーが背負うべき重い責任を象徴しています。
科学が解き明かした19の魂。 あなたが明日釣る一匹は、果たしてどの系統に連なる魚なのでしょうか。その正体を想像しながら水辺に立つとき、あなたのバスフィッシングは、単なる遊びを超えた「生命の神秘を巡る知的な冒険」へと昇華するはずです。
——————————————————————————–
おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございます。今回のブラックバスの種類に関する記事をリライトした経緯は、ヒロ内藤さんのYouTubeを見ていてブラックバスの遺伝子研究に触れていたので、記事にできものがあるか独自で調べると、ブラックバスの種類について大きく再定義されている事を知りました。
ボクのブログはこのカテゴリーで、上位に表示されているので古い情報で、ご迷惑をお掛けしていたのであれば申し訳なく思います。
ボクはX(旧Twitter)でもバスフィッシングの情報を発信しています。記事を読んで興味を持ってもらえたら「X(旧Twitter)のフォローやいいね!」を頂けると今後の活動の励みになります。また、記事の感想などがあれば、お問い合わせフォームからコメントして下さい。
また、Amazonからキンドル本「アメリカンルアーの歴史と起源」を販売しています。ルアーの誕生秘話や歴史に興味がある方は一読して下さい。キンドル・アンリミテッドに契約されている方は0円で読むことができます。
ブラックバスの種類が11種類から19種類へ!ゲノム研究による再定義!の記事が、あなたのバスフィッシングライフのサポートになれば幸いです。
では!! よい釣りを<(_ _)>
——————————————————————————–

コメント