バスフィッシングを楽しまれているアングラーのみなさん、こんにちは!今回の釣りたいバス釣り日記は、1960年代に誕生した「レイジーアイク コーポレーション」を紹介したいと思います。
現代の釣具店の棚を眺めれば、本物のベイトフィッシュと見紛うばかりの3D塗装や、精密な重心移動システムを搭載したハイテクなプラスチックルアーが溢れています。しかし、ヴィンテージ・タックルを愛する者の視点に立てば、最新の「フラッシュ(輝き)」を纏った道具だけが魚を連れてくるわけではないことを知っています。
ベテラン・アングラーの年季の入ったタックルボックスの片隅には、必ずと言っていいほど、驚くほどシンプルなバナナ型のシルエットをしたルアーが鎮座しています。
それが、アイオワ州フォートドッジという小さな町から世界的な熱狂を巻き起こした伝説、「レイジーアイク(Lazy Ike)」です。なぜ半世紀以上前の、この質素なルアーが今なお語り継がれ、コレクターの心を捉えて離さないのか。そこには、単なる釣果を超えた、栄光と悲劇、そして親子の絆が織りなす深い物語があるのです。
では!! 釣具史に輝く不滅の伝説。レイジーアイク、栄光と再生の全貌!の始まりです(^O^)/
偶然から生まれた「怠け者のアイク」
レイジーアイクの歴史を紐解くと、1930年代のデモイン川へと行き着きます。地元フォートドッジの釣り人、ニューエル・ダニエルズ(Newell Daniels)が、自作の木製ルアーをダムの近くで投げていたのがすべての始まりでした。そのルアーが描く、スローで力強い独特なウォブリングアクションに目を奪われた人物がいました。地元のスポーツ用品店を営むジョー・カウツキー・ジュニア(Joe Kautzky Jr.)です。
水面下で艶めかしく、どこか気怠そうに身をよじるその動きを見て、ジョー・ジュニアは思わずこう叫びました。
「あの怠け者のアイクを見てみろ(look at that lazy ike)」
この直感的な一言が、後に世界を席巻するブランド名となりました。ダニエルズは1938年から1940年にかけてカウツキー家のためにルアーを手彫りしていましたが、大きな利益には結びつかず、最終的にその権利をカウツキー・スポーツ用品店(Kautzky Sporting Goods)へと譲渡しました。これが、一地方のハンドメイドルアーが世界の「必需品」へと変貌を遂げる最初の契機となったのです。
手彫りから「毎時600個」の量産体制へ
権利を得たカウツキー家は、当初「ポップ」シャック(”Pop” Shuck)という鉄道員を雇い、生産を継続しました。彼は鉄道の仕事の合間に、ジグソーで形を切り出し、手作業で研磨と塗装を行うという、まさに情熱的な家内制手工業でレイジーアイクを守り抜きました。

初期の生産現場は、決して華やかなものではありませんでした。「ベイト・ハウス(餌の家)」と呼ばれた作業場には、ナマズ用の練り餌を作るための腐ったチーズや動物の血が入った55ガロンのドラム缶が並び、凄まじい臭気が漂っていたといいます。
しかし、そこで生まれたルアーの性能は本物でした。新作ルアーのテストは、わざわざ第一アベニュー北にあるYMCAのプールに持ち込まれて行われていたというエピソードも、このルアーがいかに地元の人々に支えられていたかを物語っています。
やがて、その実力が全米に知れ渡ると、需要は手作業の限界を突破します。そこでルディ・カウツキー(Rudy Kautzky)が1945年頃、独自に自動旋盤機を開発。1時間に600個ものボディを削り出す驚異的な量産体制を確立しました。生産数は1947年の年間6万個から、わずか6年後の1953年には90万個を突破。こうしてレイジーアイクは、フックやシンカーと並び、アングラーにとって欠かせない「エッセンシャル」な存在となったのです。
悲劇が生んだコレクターズアイテム「ファイア・アイク」
順風満帆に見えたビジネスを、1956年12月8日、壊滅的な火災が襲いました。カウツキー・スポーツ用品店の店舗と製造拠点は灰燼に帰しました。しかし、創業者ジョセフ・シニアの死後に跡を継いだジョー・ジュニア、ルディ、そして妹のマリー・カウツキー・グラントの三兄弟は、この災難に屈しませんでした。

彼らは焼け跡から、熱で黒焦げになりながらも形を留めたレイジーアイクを拾い集めました。これらは後に「ファイア・アイク(Fire Ikes)」と呼ばれ、今日ではカウツキー家の不屈の精神を象徴する希少なコレクターズアイテムとして珍重されています。火災からわずか1年後には、以前の2倍以上の広さを誇る7,500平方フィートの新店舗をオープンさせ、見事な復活を果たしたのです。
ウッドからプラスチックへ、そして「Deadly Dozen」への選出
1960年、ルディ・カウツキーが開発した成形機により、素材はウッドからプラスチックへと移行し、伝統の「ウッド時代」は終焉を迎えました。しかし、ルアーの魂であるアクションは失われませんでした。

1962年、雑誌『Popular Mechanics』はレイジーアイクを「釣りの致命的な12選(Fishing’s Deadly Dozen)」に選出しました。同誌は、あらゆるリトリーブスピードに対応するこの「鋭いウィグラー(sharp wiggler)」を絶賛。特に「レッドヘッド/ホワイトボディ」のモデルは、その高い視認性と艶かしいバナナ型アクションによって、全米で最も売れたカラーとして歴史に名を刻みました。
伝説のQBテリー・ブラッドショーと「ナチュラル・アイク」
1970年代後半、ブランドはさらなる高みを目指し、ピッツバーグ・スティーラーズの伝説的クォーターバック、テリー・ブラッドショーをスポークスマンに起用します。実は第一候補は元LAラムズのマーリン・オルセンでしたが、彼はNBCとのキャスター契約を理由に断念せざるを得ませんでした。

その後、ビリー・マーチンやバッキー・デントといった大物野球選手たちも候補に挙がりましたが、最終的に「釣りに対する圧倒的な情熱」が決め手となり、ブラッドショーが選ばれました。伝説の水中カメラマン、グレン・ラウ(Glen Lau)によってフロリダのレインボー川で撮影されたCMは、当時の「ナチュラル・ベイト」ブームを象徴する「ナチュラル・アイク」の爆発的な普及に大きく貢献しました。
余談ですが、バグリー・ベイト・カンパニーで「ダイビングB」シリーズなどの画期的なルアーをデザインした「リー・シッソン」をバス釣りに魅了されたのは、テリー・ブラッドショーです。大学時代、大の釣り好きであったブラッドショーが練習のオフ日にリーを釣りに誘ったことがきっかけです。
派生モデル「フレックス・アイク」と家族の記憶
1957年に登場した連結(ジョイント)モデル「フレックス・アイク(Flex Ike)」は、左右への激しいアクションで魚を狂わせる、隠れた名作です。当初は木製で、2つのサイズと6つの基本色(レッド&ホワイト、ブラックスケール、パーチ、イエロースポット、オレンジスポット、シルバースケール)で展開されました。
ヴィンテージ専門家キース・ベル氏はこのルアーに強烈な思い出を持っています。幼少期、父親と釣りを楽しんでいた際、魚が暴れた拍子にフレックス・アイクが父親の手のひらに深く突き刺さってしまいました。当時6歳だったキース少年にはボートを漕ぐ力はなく、父親はルアーを手に刺したまま数キロの道のりを自力で漕ぎ、帰宅後に近所の人にルアーを壊さないよう注意深く切ってもらったといいます。
「金銭的な価値ではなく、父との思い出が詰まったこれらのルアーは私にとってプライスレスである」
現在、ヴィンテージ市場での価格は10ドルから20ドル程度かもしれませんが、アングラーにとって、親から子へと引き継がれる物語は何物にも代えがたい価値を持つのです。
買収の連鎖と「レイジーアイク・コーポレーション」の現在
1961年、カウツキー家はビジネスを売却し、西デモインに「レイジーアイク・コーポレーション」が設立されました。
その後、1978年には名門クリーク・チャブを買収するなどの拡大を見せましたが、翌1979年にチャプター11(破産)を申請。その後、1981年にDura-Pak、1988年にGreat American Fishing Supplyへと所有者が変わり、最終的には1991年頃、PRADCO(プラドコ)へと売却されました。
現在、PRADCOはレイジーアイクの生産を行っていません。最新ルアーのような複雑な造形やフラッシュを持たないことが売上減の理由とされていますが、そのシンプルさゆえに、eBayなどのヴィンテージ市場では今なお熱心なファンによる取引が絶えません。
おわりに
複雑な最新ルアーには、アングラーの所有欲を満たす美しさがあります。しかし、レイジーアイクが教えてくれるのは、飾りを削ぎ落とした「シンプルさ」にこそ、魚の本能を揺さぶる力が宿るという真理です。現在、市場では過小評価されているかもしれませんが、その歴史的背景と実力は、他の追随を許さないほど優れています。
道具が持つ物語こそが、釣りを単なるレジャーから、人生を豊かにする文化へと昇華させます。焦げた「ファイア・アイク」や、父親の手から外された「フレックス・アイク」のように、一つの道具には誰かの人生の断片が刻まれているのです。
ボクはX(旧Twitter)でもバスフィッシングの情報を発信しています。記事を読んで興味を持ってもらえたら「X(旧Twitter)のフォローやいいね!」を頂けると今後の活動の励みになります。また、記事の感想などがあれば、お問い合わせフォームからコメントして下さい。
また、Amazonからキンドル本「アメリカンルアーの歴史と起源」を販売しています。ルアーの誕生秘話や歴史に興味がある方は一読して下さい。キンドル・アンリミテッドに契約されている方は無料で読むことができます。
釣具史に輝く不滅の伝説。レイジーアイク、栄光と再生の全貌!の記事が、あなたのバスフィッシングライフのサポートになれば幸いです。
では!! よい釣りを\(^o^)/


コメント