バスフィッシングを愛するアングラーの皆さん、こんにちは! 今回の「釣りたいバス釣り日記」は、ブラックバスを気付つけない「キャッチ&リリース」について科学と歴史の側面から紹介したいと思います。
私たちは日々、水面下の好敵手であるブラックバスとの出会いを求めてフィールドへ向かいます。力強い引きを楽しみ、優しくリリースする。この「キャッチ&リリース」という行為は、現代のバスフィッシングにおいて当たり前のマナーとして定着しています。
しかし、水中に帰っていったバスがその後どのような状態にあるのか、科学的な視点で考えたことはあるでしょうか。「元気に泳いでいったから大丈夫」という主観的な判断の裏側で、バスの体内では驚くべき生理的変化が起きています。
今回は、現代バスフィッシングの礎を築いたレイ・スコット氏の功績と、A. ウェイン・ガスタベソン(A. Wayne Gustaveson)による科学的な研究論文を軸に、バスが釣り上げられる際に受ける「生理学的ストレス」の正体を深掘りします。この論考を通じて、皆さんのこれからの釣行がより深く、そして魚に優しいものになることを願っています。
では!! 「それ、本当に大丈夫?」ブラックバスを傷つけない正しいキャッチ&リリースの始まりです(^O^)/
キャッチ&リリースの歴史的背景:レイ・スコットと「資源」への敬意
現代のバスフィッシングを語る上で、レイ・スコットという名は欠かせません 。彼が1967年にB.A.S.S.(Bass Anglers Sportsman Society)を設立するまで、バス釣りはアメリカ南部における「のんびりとした娯楽」の一つに過ぎませんでした 。
スコット氏は、この釣りをゴルフのようなプロフェッショナルなスポーツへと進化させるビジョンを持っていました 。1968年には世界初のプロバストーナメントを開催し、現在では年間1,250億ドルを超える巨大な経済圏を生み出す産業へと成長させました。しかし、彼の最大の功績はビジネスとしての成功ではなく、**「バスという資源の保護」**に科学と倫理を導入したことにあります。
1972年、スコット氏は**「キャッチしたバスを殺さない(Don’t Kill Your Catch)」**キャンペーンを開始しました 。当時のトーナメントは釣った魚を持ち帰ることが一般的でしたが、彼は通気式ライブウェル(生け簀)の装備を義務化し、キャッチ・アンド・リリースをスポーツのルールとして組み込んだのです 。
「バスは価値が高すぎて、一度だけ捕まえるものではない」
このスコット氏の言葉は、現代アングラーの精神的支柱となっています。しかし、当時の彼が直面していた課題は「いかにして生きたままリリースするか」という技術的な側面でした。そこで重要になったのが、魚が受ける「目に見えないダメージ」を解明する科学的研究だったのです。
科学が明かす「ストレス」の正体:Gustavesonの研究
レイ・スコットがリリースの重要性を説いていた1970年代、ユタ州立大学のA. ウェイン・ガスタベソンは、バスの体内変化を追う画期的な研究を行っていました 。彼の論文『Physiological Response to Hooking Stress in Largemouth Bass』は、現代でも色褪せない重要な知見を私たちに与えてくれます。
ガスタベソンは、釣り上げられたバスの血液を分析し、**「代謝疲労」「浸透圧調節の乱れ」「全身性ストレス」**の3つの指標でストレスの度合いを測定しました 。
① 代謝疲労の指標:血中乳酸値
激しい運動(ファイト)をすると、筋肉に乳酸が蓄積されます。これは人間が全速力で走った後に筋肉痛を感じるのと同じ原理です 。
- 研究結果: ファイト時間(0分〜5分)が長くなるほど、血中乳酸値は上昇します 。
- 驚くべき事実: リリース後、乳酸値はすぐに下がるわけではありません 。乳酸値はリリース後約8時間まで上昇を続け、元の数値に戻るには約24時間が必要とされます 。つまり、泳ぎ去った後もバスの体は半日以上にわたって「筋肉の限界」と戦っているのです。
② 全身性ストレスの指標:血中グルコース(血糖値)
人間も強い恐怖やストレスを感じると血糖値が上がりますが、バスも同様です 。
- 温度の壁: 水温が低い(11〜20℃)環境では大きな変化は見られませんでしたが、28〜30℃の高水温下では、5分間のファイトで血糖値が著しく上昇しました 。
- 深刻な回復遅延: 高水温下で上昇した血糖値は、72時間の回復期間を経ても高いまま維持されることが示されました 。夏場の釣りがいかにバスの生命維持システムに過酷な負荷をかけるかがわかります。
③ 浸透圧調節の乱れ:プラズマ浸透圧と塩化物イオン
魚は周囲の水と体液のバランス(浸透圧)を常に一定に保っています。しかし、釣りのストレスはこの調整機能(ホメオスタシス)を破壊します 。
- 即座の反応: あらゆる水温において、ファイト時間が長くなるほど浸透圧の乱れが生じます 。特に高水温下(16〜20℃以上)では、72時間経過してもこの乱れが完全に回復しないケースが確認されました 。
ブラックバスの生存率を左右する「3つの変数」
ガスタベソンの研究から、私たちが現場で意識すべき「変数の影響力」が見えてきます。
変数1:ファイト時間
やり取りの時間は、そのまま代謝疲労に直結します 。 ファイト時間が長ければ長いほど、乳酸の蓄積は深刻化し、代謝へのダメージが蓄積されます 。これは「ライトタックルでスリリングなファイトを楽しむ」という行為が、魚にとっては「死に至る可能性のある過酷な負荷」を強いられていることを意味します。
変数2:水温(最重要ファクター)
水温はバスの生理反応を劇的に変化させます 。 28℃を超えるような高水温期には、バスの代謝が上がっているため、ファイトによるストレス反応が極大化します 。この時期のバスは、リリースされても血糖値が戻らず、累積的なストレスによって病気や真菌感染症にかかりやすくなり、捕食者に対しても脆弱になるというリスクを抱えています 。
変数3:魚のサイズ
意外なことに、大きなバスよりも小さなバスの方が、高水温下で早く疲労し、ストレス反応も速く現れることが判明しました 。これは小型個体の代謝の速さが関係していると考えられます 。「小さいから適当に扱っていい」という考えは、科学的には大きな間違いです。
筆者の視点:実釣経験とタックルセットアップへの反映
これまで述べてきた科学的データを踏まえ、私たちアングラーはどのように行動すべきでしょうか。ボクが推奨するのは**「科学的根拠に基づいた攻めのリリース」**です。
タックル選びが「優しさ」になる
バスの生存率を上げるためには**「迅速なランディング」**が不可欠です 。そのために見直すべきは、ルアーを選ぶのと同じくらい重要な「タックルのパワー」です。
- ライトすぎないロッドの選択: 魚に主導権を渡さず、素早く寄せられるパワーを持つロッドを使用することは、ファイト時間を物理的に短縮します 。
- 太いラインの優位性: 通常より一段太いラインを使うことで、ラインブレイクを恐れずにランディング速度を上げることができます 。
「繊細な釣り」が流行する一方で、魚を守るという観点からは、あえてパワーのあるセッティングで挑むことも、立派なアングラーの心遣いと言えるでしょう 。
ハンドリングの再考
ガスタベソンは論文の中で、**「釣る行為そのものよりも、その後のハンドリングや保持の方が、魚に大きなストレスを与える可能性がある」**と警告しています 。 レイ・スコットが普及させたライブウェルも、正しく管理されていなければ、バスにとってはストレスが蓄積される場所になり得ます。私たちアングラーにできることは、以下の基本に立ち返ることです。
- 水から出す時間を最小限にする
- 乾いた手で触れない(粘膜の保護)
- ライブウェルに入れる場合は、常にフレッシュな水と酸素を供給する
バスフィッシングの文化と環境保全の未来
レイ・スコット氏は、単に釣り人を組織化しただけではありません。彼は水質汚染に対して約200件もの訴訟を提起し、1972年の**「水質浄化法(Clean Water Act)」**成立にも多大な貢献をしました 。また、ジョージ・H・W・ブッシュ氏と協力し、スポーツフィッシュの修復と管理に年間約3億7500万ドルの予算が投じられる仕組みを作りました 。
彼が目指した「スポーツとしてのバスフィッシング」は、**「自然環境を守り、科学的に魚を理解する」**という高い倫理観の上に成り立っています 。現代を生きる私たちは、スコット氏が築いた文化を受け継ぎ、ガスタベソンが示した科学を実践する段階にいます。
まとめ
バスフィッシングの「最適解」は、時代とともに変化します。しかし、変わらないのは**「バスがいなければこのスポーツは成立しない」**という事実です。
| 科学的知見のポイント | アングラーが取るべき行動 |
| リリース後、最大24時間は乳酸値が回復しない | 迅速なランディングで疲労を最小限に抑える |
| 高水温下(28℃〜)のストレスは72時間以上残る | 夏場は特に丁寧かつ素早いリリースを心がける |
| 小さなバスほど早く疲労する | サイズに関わらず全ての魚を等しく大切に扱う |
| 保持やハンドリングは強いストレスになる | 水から出す時間を最短にし、粘膜を保護する |
科学的な知見を知ることは、決して釣りの楽しみを奪うものではありません。むしろ、ターゲットをより深く理解し、一匹のバスをより大切に思うためのステップです。
次にフィールドへ立つ時、水面下に帰っていくバスの背中を見守りながら、彼らの体内で起きている「回復への戦い」に思いを馳せてみてください。その想像力こそが、レイ・スコットが夢見た「スポーツマン」としての真の姿であり、バスフィッシングの未来を守る唯一の力なのです。
おわりに
最後まで読んで頂きありがとうございました。ボクはX(旧Twitter)でもバスフィッシングの情報を発信しています。記事を読んで興味を持ってもらえたら「X(旧Twitter)のフォローやいいね!」を頂けると今後の活動の励みになります。また、記事の感想などがあれば、お問い合わせフォームからコメントして下さい。
【バスフィッシングの「起源」を紐解くKindle本のご紹介】
ルアーの誕生秘話や、歴史に名を刻むジャイアントたちの足跡を追いかけた2冊のKindle本を出版しています。 オールドルアーファンの方はもちろん、歴史の裏側に興味がある方はぜひ手に取ってみてください。
- 『アメリカンルアーの歴史と起源』 知られざるルアー誕生の物語を凝縮した一冊。
👉https://amzn.to/3PoKTPI - 『バスフィッシング・ジャイアント全史』 業界を築き上げた偉人たちのドラマを紐解く決定版。 👉 https://amzn.to/47C1rgQ
💡 お得な情報 どちらも Kindle Unlimited 加入者の方は、追加料金なし(0円)でお読みいただけます!
「それ、本当に大丈夫?」ブラックバスを傷つけない正しいキャッチ&リリースの記事が、あなたのバスフィッシングライフのサポートになれば幸いです。
では、皆さんも良い釣りを (^_^)v

コメント